「助けて」と言える社会へ
西淀川フードバンク(食料無料市場)のとりくみ
公益財団法人 淀川勤労者厚生協会
副理事長 長瀬文雄
西淀川フードバンクは、公財淀川勤労者厚生協会や西淀川社会保障推進協議会、生活と健康を守る会、西淀川・淀川健康友の会や区内こども食堂運営団体、外国人支援にとりくむNPO法人、西栄寺、あおぞら財団、労働組合が実行委員会(澤田佳宏実行委員長)を結成し、これまで3回実施してきました。
きっかけは、年末に大阪で相次いだ餓死事件です。港区で60歳代と40歳代の親子が餓死。死亡時は2人とも体重30キロで所持金もなかったということですが、近隣住民はその異変に気が付かなかったと報道されています。コロナ禍のなか「こんな人が周りに“助けて”と声に出せずにいるのではないか」との思いから区内の幅広い団体、個人などの参加を得て始まったものです。
これまで、1月24日(日)、2月27日(土)、3月28日(日)といずれも西栄寺を会場に開催しました。どうしたら、ほんとうに生活に困っている方、社会的に孤立している方にこの企画を届けることができるのか検討し、地元印刷会社の全面協力を得て案内チラシを作成しました。
区役所にも申し入れ、掲示を頂いたことやボランテイアによる区内全世帯への配布、社会福祉協議会、区内中学校、連合町会会長、区内のこども食堂、こども支援センター、スーパー、銭湯などにも訪問し、協力の申し入れを行いポスターの掲示、チラシ配布をお願いしました。
さらに、SNSを通じても発信しました。外国人のこどもの学習支援しているNPOでは独自にチラシを印刷、配布され、他の外国人コミュニテイーの方々にSNSなどでも案内していただきました。
また、地元の食品関連企業や製薬・医材企業、市民生協はじめ多くの団体、個人から貴重な物資提供やカンパもいただきました。カンパはこれまで150万円以上が集まっています。
第1回目は1月24日、終日雨のなか200人の方が来場されました。また第2回目は2月27日に行い500人もの方が来場されました。
そして、3月28日に行った第3回目はやはり雨の中でしたが開場1時間前には長蛇の列ができ430人が来場、用意したお米やレトルト食品、お菓子、野菜、果物、おむつ、トイレットペーパー、マスク、生理用品、飲料などを次々と受け取っていかれました。
今回は原発事故から10年の「福島」と連帯し福島ふるさと産直センターから安価で500㎏のコシヒカリも調達できました。
3人の小さな子どもと一緒に訪れられた若い女性は「小さなこどもを抱え、コロナの中で共働きだがとても追いつかない。こんな優しさにあふれる取り組みは本当に助かる」と語りました。会場には高齢者や失業中の方、シングルマザー、外国籍の人、コロナで仕事をなくした人などSNSを通じて企画を知り遠方から来た人もおられました。
「専門学校に通うために大阪に出てきたが、貯金も底をつき、来月の家賃も払えない。これ以上親の援助も望めない。友人の自転車を借りて場所を探してきた」「長引くコロナの影響で生活が行き詰まり途方に暮れていた。優しさに触れ涙があふれた」在西淀川の外国籍の方は「本国への仕送りで1カ月に3万円の生活のなか、本当に命が救われる思い」などの声がたくさん聞かれました。
第2回、第3回と来場された方にはほぼ全員に生活アンケート(日本語版と英語版)を取りました。どの世代でもコロナ禍を契機にいっそう生活困窮が増していること、精神的苦痛や不安を感じていることがより鮮明になっています。(図表参照)
ボランティアスタッフも毎回、前日はお米の仕分けなどに50人以上が参加していただき、開催当日はそれぞれ100人以上の方が参加していただきました。
また、医師による健康相談、弁護士による法律相談や労働相談、ソーシャルワーカーによる無料低額診療相談も行われ、生活保護への申請につながった方もおられました。また、区内2か所の常設会場も設け案内をしています。
ボランテイアスタッフからは「身近にたくさんの人たちが生活に困窮していることを知り驚いた。『ありがとう』と言われ心が熱くなった」「地元の企業からの心温まる支援など、地域の連帯を強く感じた。国は“自助・共助”をいうが、私たちはすでに共助をやっている。あとは国や行政の公助が役割を果たす時だ」などの感想を寄せられました。
〝自助〟や〝自己責任〟が声高に叫ばれ、「助けて」と言えない時代。社会的孤立が広がるなか地域で、これまでの枠を超えて、様々な団体、個人がいのちと暮らしを守る新しい連帯をつくるとりくみだと実感しています。
実行委員会として、第4回フードバンクを6月5日(土)に予定しています。困難を抱えている多くの方にこの企画が届くこと、また安定的に物資やカンパなどの支援の輪が広がるが今後の課題です。
【第2回、第3回来場者アンケートより=500人】