「あなたがいてくれるだけで嬉しい」
高齢者の診察をしていて「長生きなんてするんじゃなかった！」と言われてハッとすることがあります。そもそも今の社会は誰にとっても生きるに値すると感じられる社会なのか、ということを改めて考えさせられます。生きるに値すると思えないような社会で、医師が健康で長生きする方法だけを提案しているとすれば、それは質の悪い喜劇のようなものではないでしょうか。
ホスピスの母と称されるシシリー・ソンダース医師は「あなたはあなたであるから重要で、あなたの人生の最期の一瞬まで重要です」と述べています。
私たちは、同じ社会に生きる人たちに対して「あなたがいてくれるだけで嬉しい」と伝えることができているでしょうか。健康で長生きする方法を示すとともに、どんな人であっても、存在することのみによって価値ある存在として認められる社会を目指したいものです。「生きたい」という気持ち以上の長生きの秘訣を私は知りません。
西淀病院 鈴木 医師